高蒔絵行程見本 

1.置目

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透明のプラスチック板に模様を描いた紙を挟みます。
模様の輪郭を細く線描きします。比較的軟らかい弁柄漆(弁柄粉を混ぜた漆)を使います。
置目用の紙の滑らかな面をプラ版に描いた線に押さえ付けます。
紙に付いた漆の線が乾かないうちに器物に刷毛で押し付けます。薄らと模様が付きます。
そこに銀消し粉を蒔き込みます。
湿し風呂(漆の乾燥には適当な温度と湿度が必要です。温度は摂氏25-30度 湿度75-85%です。よって木製の箱に湿度を加えて上記の条件にします。)に入れます。

2.銀上げ

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顎、頬骨、兜など高くする部分を絵漆(硬めの弁柄漆)で付け書き(厚みを付けて模様を描く)し銀粉を蒔きこみます。
湿し風呂に入れます。

3.漆上げ

漆上げ1回目.jpg
漆上げ漆高蒔絵漆)各蒔絵師は独自に調合して作ります。粘度が高く厚みを付けて描いても縮み(ちぢみ;表面だけ乾き中が生乾きの状態)を起こさない漆です。
漆上げ漆書き割り線として残したいところを書き残す)をします。
空風呂(湿度をかけていない箱。埃よけ。)で一昼夜置き、半乾きにして縮む心配がないことを確認してから湿し風呂に入れます。よく乾かします。

4.漆上げ2回目

漆上げ2回目.jpg

  • 更に漆上げを重ねる。銀上げによってできた突起を滑らかにします。
  • 3と同様に乾かします。

5.地塗り、粉入れ

地塗り粉蒔き.jpg

  • 地塗漆(特に薄く延びるように調合した弁柄漆)で地塗り(専用の丸筆と呼ばれる筆により薄く均一に塗る)をします。
  • 粉入れをします各部分ごとに適切な粉を蒔き分けます。蒔絵粉には金属の種類、形状、大きさなど細かく区別されています。)
  • 湿し風呂に入れ乾燥させます。
  • 絵の手前部分の色ごとに地塗りして隣り合う部分の色が違う場合はその部分を塗り込んでから次の箇所へすすみます。

6.塗り込み

塗り込み.jpg

  • 塗り込み(各部分に適切な漆を塗る)
  • まず空風呂に入れ、なじませてから湿し風呂に入れます。
  • 急に強い湿しをかけると色漆(各漆用の顔料を混ぜた漆)の発色が悪くなります。



7.炭研ぎ

炭研ぎ.jpg

  • 荒研ぎ(塗り込みが十分に乾いた後、桐炭または朴炭で金粉が淡く現れる程度まで研ぐ)をします
  • 炭は棒炭(年輪にそって縦に細く切り出し、砥石で整えて年輪と直角の面をあてる)や針炭(棒炭の先をさらに尖らせたもの)を用いて研ぎます。
  • 摺漆(生漆を脱脂綿で薄くのばしつけて、ただちにティッシュペーパーでよく拭き取る)をします。
  • 仕上げ研ぎ(荒研ぎより一層注意して研ぐ、注意を怠ると金粉の層を研ぎ破ることになる)をします。
  • 今回のように複雑な凹凸がある模様は特に炭の出番が多です。ペーパーなどでは書き割りの縁まで研ぐことが困難です。

8.胴擦り 艶上げ

つや上げ.jpg

  • 胴擦り(羽布あて;酸化クロームと油を練り合わせた物を用いる)をします。
  • 摺漆をします。
  • 艶上げ(専用の磨き粉と少量の油を用い、手で磨き上げる)をします。
  • 摺漆艶上げは繰り返すことで艶が深くなります。
  • 本来なら胴擦りの後、毛打ち(絵漆より更に粘性を高めた弁柄漆で専用の筆により描く上絵)を入れます。



ここで紹介した技法及び技法の名称は工房晃岳で使用しているもののため一般の物とは異なる可能性があります。